山に登る旅よりある女に贈る
山の頂上にきれいな草むらがある、その上でわたしたちは寝ころんでゐた。眼をあげてとほい麓の方を眺めると、いちめんにひろびろとした海の景色のやうにおもはれた。空には風がながれてゐる、おれは小石をひろつて口 にあてながら、どこといふあてもなしに、ぼうぼうとした山の頂上をあるいてゐた。
おれはいまでも、お前のことを思つてゐるのだ。
■ 2024-01-13
■ 日本経済新聞・夕刊・文学周遊、欄は井上靖・僧行賀の涙、だった。
■ これは読んだことはない。
■ ただ、井上靖の詩集を思い出した。
■ 散文詩だ。
■ 猟銃、そして、小説・猟銃。
■ ・・・ ホンマかいな。人生の白い河床をのぞき見た中年の孤独なる精神と肉体の双方に、同時にしみ入るような重量感を捺印するもは、やはりあの磨き光れる一箇の猟銃をおいてはないと思うのだ。
■ 今「詩」からは離れているが、・・・
■ 丸谷才一・新々百人一首の、はしがき、に、萩原朔太郎・旅よりある女に贈る、があげられており、この詩は、大弐三位の和歌の影響下に書かれたのではないか、と、十代の丸谷才一は気づき、二つを二重写しにして文学的感銘を受けていたと。
■ なるほど、と思う。
■ しかし、
■ 尾崎雅嘉・百人一首夕話、・・・
かの有馬山より猪名の篠原さして風が吹きくれば、篠の葉がそよそよとすれ合ふそのそよといふ言葉を、それよといふ事にして、
まことにそれよ来もせぬ人の心こそ覚束なけれこなたには忘れはせぬものをといふ事なり。
- 有馬山 猪名のささ原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする 大弐三位
■ 和歌、短歌の前に「詩」は
- 「おれはいまでも、お前のことを思つてゐるのだ。」
■ などと言ったところで形無しだ。
■ いかにも空疎な感じだ。
■ ・・・
■ 三好達治は萩原朔太郎、という本を書いている。
■ 三好達治の詩は、幾つか好きなのがある。
0 件のコメント:
コメントを投稿